顔の本人確認と本人識別
顔の本人確認は1:1の比較で、申告された一つの身元と一致するかを確認します。顔の本人識別は登録済みギャラリー全体を対象とする1:Nの検索で、その人物が誰であるかを判定します。前者は本人かどうかに、後者は誰かに答えるもので、精度上も法制度上も性質が異なります。
1:1と1:Nは実務上どう違うのか
| 本人確認(1:1) | 本人識別(1:N) | |
|---|---|---|
| 1回あたりの比較回数 | 1回 | 登録人数と同じ回数 |
| 本人からの身元申告 | あり(カード、旅券、暗証番号) | なし |
| 代表的な用途 | 端末のロック解除、出入国ゲート、決済 | 監視リスト警報、事後捜査 |
| 登録件数が増えた場合 | 影響なし | 誤一致の機会が増える |
| 規制上の厳しさ | 相対的に低い | 大幅に高い |
両者を分けるのは登録件数です。本人確認は1件のテンプレートを別の1件と比較するため、誤り率は登録人数に左右されません。本人識別は登録済みの全テンプレートと比較するため、無関係な人物が閾値を超えて一致と判定される可能性は、登録件数とともに高まります。
本人識別が本人確認より難しい理由
1:N検索では比較の1回ごとが誤一致の機会となるため、1件相手なら適切に働く閾値でも、10万件を相手にすると誤警報が続くことがあります。識別システムはこれを補うために閾値を厳しくし、判定ではなくスコア付きの候補一覧を返し、結果に基づく処置の前に人による確認を必須とします。
- 閾値:本人確認より高く設定し、再現率を犠牲にして適合率を取ります。
- 候補一覧:単一の答えではなく、上位の候補をスコアとともに返します。
- 人による判断:警報が実際の措置につながる前に、担当者が確認または却下します。
- ギャラリーの品質管理:登録画像の品質を検査します。登録が粗いと以後のすべての検索が劣化するためです。
法制度は本人確認と本人識別を区別するのか
多くの場合、区別します。端末のロック解除や旅券を用いた出入国ゲートの通過など、本人の関与を伴う本人確認は広く認められ、適用除外となることも少なくありません。登録していない人物の、とりわけ公共空間での本人識別は、EUのAI法で制限され、米国の複数の州の生体情報保護法で規制され、一部の市条例では禁止されています。
調達文書に顔認識とだけ書かれている場合、この2つは区別されていません。しかし、どちらの規則が適用されるかを決めるのはまさにこの違いです。法務確認の前に、どちらを実施するのかを明記してください。
よくある質問
- 顔の本人確認と本人識別の違いは何ですか。
- 本人確認は1:1の比較で、顔が申告された一つの身元と一致するかを確認します。ゲートでの旅券写真との照合が例です。本人識別は1:Nの検索で、登録済みの集団の中から誰であるかを判定します。識別は計算負荷が高く規制も厳しく、クラウドの顔認識サービスの一部では提供されていません。
- 顔認識における1:Nとは何を指しますか。
- 1:Nは、1件の照会用の顔をN件の登録テンプレートと比較し、最も近い候補を返す検索を指します。Nは登録件数です。登録テンプレートの1件ごとが別人と一致する機会になるため、1:N検索の誤一致率は登録件数の増加とともに上昇します。
- 本人確認と本人識別ではどちらが高精度ですか。
- 同じアルゴリズムと閾値であれば本人確認です。登録人数分ではなく1回だけ比較するためです。本人識別は、閾値を高くし、単独で判定せずスコア付きの候補を人の確認に回すことで、同等の信頼性に到達します。
- スマートフォンの顔認証は本人確認と本人識別のどちらですか。
- 本人確認です。端末は所有者本人のテンプレートを1件保持し、提示された顔をそれとのみ比較します。他人のギャラリーは端末内に存在しません。処理が速いのも、精度が母集団の規模に左右されないのもこのためです。
- 1つのシステムで両方を実行できますか。
- 実行できますし、企業向け製品の多くが対応していますが、2つのモードは別々に設定します。閾値、記録義務、確認手順のいずれも異なるため、1つの設定として扱うと、識別の運用が本人確認向けの緩い許容度で動くことになります。
- 監視リストはどちらのモードですか。
- 本人識別です。監視リストの仕組みは、カメラが捉えたすべての顔を登録リストと比較する1:N検索であり、そのNを意図的に小さく限定します。通行量の多い出入口でも誤一致率を管理可能に保てるのは、この小さなギャラリーによるものです。
